古流協会の家元会で毎年親睦の旅行を行っている。全員参加というのはまず不可能だが、今年は7人の参加者を得て熱海に行った。
北海道や台湾に行ったこともあるが今年は近場で寛ごうという趣旨だったので、皆でどこかを周るというような予定もなく、東京をゆっくり出て、直接宿に向かうということになった。私は箱根の「彫刻の森美術館」で開催されている企画展に興味があったので、私だけ別行動となった。
秋の箱根路は紅葉真っ盛りで、一人快適なドライブを楽しむ。
彫刻の森にはお昼少し前に到着。
彫刻の森に来るのはおそらく何十年ぶりかのこと。展示物や新しい建物など、かなり増えているようだ。子供たちが小さいころに何度か来る予定を立てたことがあったが、結局流れてしまった。無理をしてでも連れてきてあげればよかったなあと、少しばかり後悔。
さて目的の企画展。
全体、さらりとしていて湿っぽいところがなく、とてもさっぱりとした印象。経歴を見ると、作者はどうやらデザイン畑出身との由。何事もジャンルで区切って判断するのはいいことではないが、なんとなく納得する。
作品は決して大仰なものではなく、むしろ日常どこにでもあるようなものも多用している。それらが、視点を変えることでそこに新たな発見や驚きがあり、そのギャップが心地よい。作者は「見立て」という言葉を使っているが、遊び心などもまぶされた作品に、時にニヤリとしたりしながらも凝り固まった頭を固定観念から解放してくれる。カラリとしているが空虚ではない、開放感あふれる展覧会だった。
時間がたっぷりあるので外を一巡り。
ロダン、ブールデル、ムーア、アルプ、ザッキン、などなど、しばらく忘れていた懐かしい名前の数々。気持ちがどんどん弛んでいく。
この日はメンテナンスの日なのか、係の人達があちこちで手入れしている姿を見かけた。こうした努力によって美しい状態が維持されているのだな。
ピカソ館、マンズールームなど、室内展示も見ごたえがあった。
丘の斜面の一隅にイサムノグチの作品が置かれていた。最初に見たときには誰の作品か全く見当がつかなかった。これに出合えたのも大きな収穫だった。
晩秋の一日、身も心も軽くなる小さな一人旅だった。