午後に外回りを二件。
まずは池袋西口にある東京芸術劇場で開催中の錦花池坊の花展に。
今回の花展は全員が蘇鉄(ソテツ)を使って作品を作るという、いわば研究会的な催しで、従来の花展の常識からはかけ離れたユニークな花展だ。
丁度会場に家元の加藤典舟先生がいらして、「習作展みたいなものです」と謙遜されていたが、どうして、堂々とした見ごたえのあるものだった。
副家元、加藤大樹君作。
現代美術の展覧会などにも積極的に参加しており、若手の中でも意欲的な活動をしている好青年ではあるが、今回の作品に関してはいかがなものだったか。
ネタは巷間かまびすしいオリンピックのアレだというのは一目瞭然。
模倣でもそこにプラスアルファの要素があれば、それはそれで作品としての存在価値もあるのだろうが、単に話題性とか奇をてらうだけの作品ではいけばなの評価を貶めかねない。
やる気のある若手でいいものを持っているだけに安直な方向に向かわず、独創性を大切にしてほしいと思った。
つづいて三軒茶屋に向かい、カメラマンの桜井ただひささんの作品を拝見に行く。
三軒茶屋というと最近ではオッシャレーなイメージの街だが、意外にも栄通りという庶民的な商店街があり、会場のgalerie H はその商店街を5分ほど歩いたところにある。
桜井さんは主に美術作品などの撮影を専門にしている方で、私が20年数年前に初めて神田の画廊で個展を開いたときに会場でお会いして以来お付き合いいただいている。
今回は金網の入ったガラスや薄いロールカーテン越しに対象物を写し込むという試みをされており、モノトーンに近い、一見版画のような雰囲気の作品展だった。
写真なのだけれども、点描の絵画や表現主義の絵画のようにも見え、それでいてとても静かで柔らかさを湛えた不思議な写真展だった。
写真というのはもう様々な表現が出きってしまっているジャンルだと勝手に思っていたが、まだまだ潜在力を秘めた世界なのだなあと認識を新たにした作品展だった。