実験不発だが充実。

暮れに二つの展覧会、『会田誠展』と『観世宗家展』のチケットを頂いた。
全く世界が異なる展覧会を一度に見たら、頭の中はどうなるのだろうかという思いにそそのかされて、本日その実験にかかった。

行く前に雑用をすませようと教室に寄ったところ、意外に手間取って、最初の「観世宗家展」の会場である松屋銀座に着いたのは2時近くになってしまった。

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そもそも能自体がほとんど未知の世界であり、特に深い興味もなかったので、こちらはサクッと済ませて次に向かうつもりであった。
展示内容は、能衣装や面(おもて)それに文献的な資料といったところ。サブタイトルに『風姿花伝』とあるように、世阿弥直筆のものも含まれる文献が、今回の展示のめだまの一つなのであろうが、衣装や面が予想外に興味深く見られた。

能には雅とか幽玄とかってイメージがあるので、落ち着いた色合いとかシブい感じの衣装を着て舞うものだとばかり思っていたのだけれど、これが大間違い。紅白歌合戦(最近見ていないけれど)も霞むような華やか・・・っていうかド派手のものがゾロゾロ。とても何百年も前に作られたものとは思えぬ斬新さ!
これは正にステージ衣装。そしてそれらが飾りものではなく連綿と受け継がれ、実際に使われているのだから、能の歴史を見せつけられる思いがする。
使えば当然傷むわけだが、生地自体が劣化しているのか、襟や袖ばかりでなく背中の中ほどのあたりがちょうど着古したGパンの膝の上あたりのように、今にもパックリ裂けそうなほど傷んでいるものも見られた。そしてそれらが繕ってあるのだが、これが意外にシロートっぽくて、中には小学生の家庭科レベルみたいなものある。典雅崇高な能衣装がいきなり人間的に見えてきたりして、そのギャップが面白かった。

面を真近かで見るのは初めてのことだった。
以前外国映画で『マスク』というのがあったのをご記憶の方は多いと思う。マスクを被ると人格が変わってしまうという映画。能の面を見ていて、ちょうどあのマスクと同じなのではないかという思いが頭をよぎる。
古い面からは妖気のようなものが出ているように感じた。そしてそれが能を演じるものをその者自身になりきらせるのではないかと思えてきた。

そんなこんなで予想外に長居をしてしまった。で、本日は打ち止め。
残念ながら「能vs会田誠」という実験は不発に終わったのであった。
by katabami03 | 2013-01-11 22:25 | 展覧会・イベント
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